数論的関数の用語と例

  • 2018/07/10 07:50
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数論的関数の用語やその関連について整理したかったので書くことにした.

数論的関数

数論的関数は, 定義域が正整数 Z+\mathbb{Z}^{+} である複素数を値にもつ関数である. すなわち

数論的関数

Z+\mathbb{Z}^{+} から複素数 C\mathbb{C} への関数 Z+C\mathbb{Z}^{+}\to\mathbb{C}

をいう.

加法的関数

加法的関数は以下で定義される.

加法的関数

mZ+,nZ+,gcd(m,n)=1m\in\mathbb{Z}^{+}, n\in\mathbb{Z}^{+}, \gcd(m,n)=1 について f(mn)=f(m)+f(n)f(mn)=f(m)+f(n) を満たす数論的関数 f(x)f(x)

e.g.:

  • nn の異なる素因数の総数 :=ω(n):= \omega (n). ω(4)=1,ω(20)=ω(225)=2,ω(2018)=ω(21009)=2\omega(4)=1, \omega(20)=\omega(2^2\cdot 5)=2, \omega(2018)=\omega(2\cdot 1009)=2
  • nn の異なる素因数の和 :=sopf(n):= \text{sopf}(n). sopf(1)=0,sopf(4)=2,sopf(20)=2+5=7,sopf(2018)=1011\text{sopf}(1)=0,\text{sopf}(4)=2,\text{sopf}(20)=2+5=7,\text{sopf}(2018)=1011

また, 完全加法的関数は以下で定義される.

完全加法的関数

mZ+,nZ+^\forall m\in\mathbb{Z}^{+}, ^\forall n\in\mathbb{Z}^{+} について f(mn)=f(m)+f(n)f(mn)=f(m)+f(n) を満たす加法的関数 f(x)f(x)

e.g.:

  • nn の重複も含めた素因数の総数 :=Ω(n):= \Omega(n). Ω(1)=0,Ω(20)=Ω(225)=3,Ω(2018)=Ω(21009)=2\Omega(1)=0, \Omega(20)=\Omega(2\cdot 2\cdot 5)=3, \Omega(2018)=\Omega(2\cdot 1009)=2
  • nn の重複も含めた素因数の和 :=sopfr(n):= \text{sopfr}(n). sopfr(4)=2+2=4,sopfr(20)=sopfr(225)=2+2+5=9,sopfr(2018)=sopfr(21009)=2+1009=1011\text{sopfr}(4)=2+2=4,\text{sopfr}(20)=\text{sopfr}(2^2\cdot 5)=2+2+5=9,\\ \text{sopfr}(2018)=\text{sopfr}(2\cdot 1009)=2+1009=1011

乗法的関数

乗法的関数は以下で定義される.

乗法的関数

mZ+,nZ+,gcd(m,n)=1m\in\mathbb{Z}^{+}, n\in\mathbb{Z}^{+}, \gcd(m,n)=1 について f(mn)=f(m)f(n)f(mn)=f(m)f(n) を満たす数論的関数 f(x)f(x)

乗法的関数は, 任意の加法的関数 f(n)f(n) を用いて簡単に構成することができる. たとえば, 乗法的関数 g(n)g(n) を指数法則より g(n)=2f(n)g(n)=2^{f(n)} とおくことができる. また, 22 つの乗法的関数 f(n)f(n)g(n)g(n) をつかって, h(n)=f(n)g(n)h(n)=f(n)g(n) という乗法的関数をおくことができる. より一般化すると,

命題 1

f(n)f(n) が乗法的関数, 和 dn\displaystyle\sum_{d\mid n}ddnn のすべての約数にわたるとき, g(n)=dnf(d)\displaystyle g(n)=\sum_{d\mid n}f(d) は乗法的関数である.

命題 1

n=n1n2, gcd(n1,n2)=1n=n_1n_2,\ \gcd(n_1,n_2)=1 とすると, nn の約数 ddn1n_1 の約数 d1d_1 と, n2n_2 の約数 d2d_2 との積で尽くされる. すなわち gcd(d1,d2)=1\gcd(d_1, d_2)=1 だから g(n)=dnf(d)=d1n1, d2n2f(d1,d2)=d1n1, d2n2f(d1)f(d2)=d1n1f(d1)d2n2f(d2)=g(n1)g(n2) \begin{aligned} g(n)&=\sum_{d\mid n}f(d) \\&=\sum_{d_1\mid n_1,\ d_2\mid n_2}f(d_1,d_2) \\&=\sum_{d_1\mid n_1,\ d_2\mid n_2}f(d_1)f(d_2) \\&=\sum_{d_1\mid n_1}f(d_1)\sum_{d_2\mid n_2}f(d_2) \\&=g(n_1)g(n_2) \end{aligned}

e.g.:

  • f(n):=gcd(n,k)f(n):=\gcd(n,k). k=2k=2 としたとき, f(15)=f(3)f(5)=1, f(24)=f(3)f(8)=2f(15)=f(3)f(5)=1,\ f(24)=f(3)f(8)=2
  • 指数法則: kZk\in\mathbb{Z} に対する nkn^k
  • メビウス関数 :=μ(n):= \mu(n). μ(18)=μ(232)=0, μ(6)=μ(23)=1,μ(7)=1\mu(18)=\mu(2\cdot 3^2)=0,\ \mu(6)=\mu(2\cdot 3)=1, \mu(7)=-1.
  • オイラーのトーシェント関数 :=ϕ(n):= \phi(n). ϕ(6)=ϕ(3)ϕ(2)=2, ϕ(28)=ϕ(4)ϕ(7)=12\phi(6)=\phi(3)\cdot\phi(2)=2,\ \phi(28)=\phi(4)\cdot\phi(7)=12.

また, 完全乗法的関数は以下で定義される1.

完全乗法的関数

mZ+,nZ+^\forall m\in\mathbb{Z}^{+}, ^\forall n\in\mathbb{Z}^{+} について f(mn)=f(m)f(n)f(mn)=f(m)f(n) を満たす乗法的関数 f(x)f(x)

e.g.:

  • ディリクレ級数 a(n)a(n) におけるディリクレの L 関数: L(s,a)=n=1a(n)ns=p(1a(p)ps)1,\displaystyle L(s,a)=\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{a(n)}{n^s}=\prod_{p}(1-\dfrac{a(p)}{p^s})^{-1},. 自然数全体の総和が素数全体の積に等しい.

参考文献


  1. 代数学的な定義でいえば, モノイド(Z+,\mathbb{Z}^{+},\cdot)から他のモノイドまでの準同型写像である.↩︎


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